これでわかる!吉祥紋様解説第3回「蜻蛉(とんぼ)」(帯写真あり)
「吉祥紋様とは良い兆候、おめでたいしるしという意味を表した文様の総称です。」
トンボは日本画家に好まれ、菖蒲(しょうぶ)の枝に留めて「勝負に勝つ」「勝負につく」といわれ「勝ち虫」と呼ばれています。
また前進あるのみ、決して退かないところから「不退転」の精神を表すため武家社会で好まれていました。
他にもトンボは体が甲冑に似ていたり、枝先に止まることが多いため「頭につく」「頭領になる」ともいわれ、上杉謙信の兜に利用されたりもしていました。
これらの事から男性の着物によく使われる機会も多いのですが女性物に使用しても全く問題はございません。
当然おび弘にもユニークなトンボ柄の帯がございます。
本日ご紹介する帯は「染め分けトンボ」です。
一番の特徴は、一見生地が破れているように見える織り方です。
拡大画像を見て頂くとわかりますが、この破れの部分の組織だけメッシュ状の紗織りにしています。これは現存する多くの正倉院裂(しょうそういんぎれ)が参考画像のようにかなりダメージを受けて破れているものが多く、それをイメージしております。
複雑な組織ではないですが、ありそうでなかった表現方法だと思います。
トンボは全て刺繍し、生地は紬糸で織り上げてツートンカラーの麻等だとできない後染めを施しています。
紬で織っているこの帯はちょうどこれからの季節、洒落ものの秋単衣にぴったりです。
帯に関するご質問等がございましたら、お気軽にメールでお問合せください。
破れの組織のアップ。メッシュ状になっています。
松本包夫さん著作「正倉院裂と飛鳥天平の染織」より“紫地獅子奏楽文錦”