
これでわかる!吉祥紋様解説第4回「菊」(帯写真あり)
「吉祥紋様とは良い兆候、おめでたいしるしという意味を表した文様の総称です。」 菊は中国では仙花と呼ばれ、薬の力を持つ花とされており、日本には奈良時代の終わりから平安時代にかけて渡来したと推定されます。というのも数多くの植物について詠んだ、奈良時代に成立した万葉集の中に1つとして菊を扱ったものがないからです。 菊は姿、色、香りに優れているため多くの絵や工芸品の題材にされています。 現代ではほとんど無くなってしまいましたが、9月9日の重陽の節句には菊に綿をかぶせ、香りとつゆをそれに移し、その綿で体を拭くと菊の力により延命、無病、長寿になるという「菊の着綿(きせわた)」という古い習慣がありました。 菊は秋の花ですが、紋様では古典的な吉祥紋様として広く好まれ、着物や帯の柄に季節を問わず多用されます。(※1)後鳥羽上皇がこよなく愛された事から16弁の菊が皇室の御紋となっているのも皆様のご存知の通りです。 今回ご紹介する帯は「羅綾(らりょう)、嵯峨菊」です。 菊の紋様には様々な物がありますがこの帯は乱菊紋の一種といえるかもしれません。乱菊紋は菊の花びらをそれ

「美しいキモノ」2017秋最新号39ページ掲載帯のご紹介
今回ご紹介する帯は「大和錦、截金亀甲」です。 截金(きりかね)とは飛鳥時代に日本に伝わってきた技法で、仏画や仏像に広く使われています。金箔、銀箔、現代ではプラチナ箔などを用いますが、細く直線状に切断し、それを筆などで貼り、紋様を表現します。 この帯の柄は亀甲柄ですが現代でも截金の工芸品などによく利用されています。截金細工の繊細な線を再現するために機はジャガード針の数を800口(※1)と多くし、極細の経糸と、金糸、引き箔(※2)を駆使しているため、その結果、帯というキャンバスに上手く截金を表現できています。 柄がシンプルなため、どのような柄のお着物でも比較的合わせやすく、多用していただける、使いやすい帯でございます。また、亀甲でおめでたいですし、華やかな訪問着に締めて頂くのもよろしいのではないのでしょうか? 帯に関するご質問等がございましたら、お気軽にメールでお問合せください。 (※1)ジャガード針の数を800口…1本の針で何本かの経糸の上げ下げを操作しますがこの口数が増えれば増えるほど、針1本で操作する経糸の本数が減りますので、必然的に細かい柄を

これでわかる!吉祥紋様解説第3回「蜻蛉(とんぼ)」(帯写真あり)
「吉祥紋様とは良い兆候、おめでたいしるしという意味を表した文様の総称です。」 トンボは日本画家に好まれ、菖蒲(しょうぶ)の枝に留めて「勝負に勝つ」「勝負につく」といわれ「勝ち虫」と呼ばれています。 また前進あるのみ、決して退かないところから「不退転」の精神を表すため武家社会で好まれていました。 他にもトンボは体が甲冑に似ていたり、枝先に止まることが多いため「頭につく」「頭領になる」ともいわれ、上杉謙信の兜に利用されたりもしていました。 これらの事から男性の着物によく使われる機会も多いのですが女性物に使用しても全く問題はございません。 当然おび弘にもユニークなトンボ柄の帯がございます。 本日ご紹介する帯は「染め分けトンボ」です。 一番の特徴は、一見生地が破れているように見える織り方です。 拡大画像を見て頂くとわかりますが、この破れの部分の組織だけメッシュ状の紗織りにしています。これは現存する多くの正倉院裂(しょうそういんぎれ)が参考画像のようにかなりダメージを受けて破れているものが多く、それをイメージしております。 複雑な組織ではないですが、ありそ