これでわかる!吉祥紋様解説第1回「松竹梅」(帯写真あり)
吉祥紋様とは良い兆候、おめでたいしるしという意味を表した文様の総称です。
吉祥紋様解説第1回にふさわしいのはやはり定番の「松竹梅」ではないでしょうか。
元々は中国の「歳寒三友(さいかんさんゆう)」が日本に伝わってきたものです。中国では
松と竹は寒さに耐え、色も褪せず緑のままで、梅は寒い中一番初めに花が開く
「清廉潔白」「節操」の意味を持ち古来より書画などの題材として数多く使われてきました。
ですから今日、日本でイメージされている「おめでたい」というイメージとは全く違います。
日本では諸説ありますが、ある時代より松は「不老不死」竹は「子孫繁栄」梅は「長寿」(「産め」と当てはめてよい子を産むという説もあり)の象徴とされ、おめでたい席に好まれるようになりました。
ですから中国でも日本でも松竹梅は対等でお料理屋さんなどでコースの違いを表すような差を本来は持っていないのです。
中国では松竹梅より四君子(蘭・竹・梅・菊)の人気があるようです。
四君子についてもそのうちに解説させて頂きますのでご期待ください。
帯は「本袋匠琳、菱取松竹梅」です。
画像をご覧ください。前側のお太鼓の柄が送り(同じ柄の繰り返し)の帯なのですが
後ろ側の腹の所から柄が90°横に向いている事がお分かりいただけると思います。
おび弘内では「送り柄なのに別腹」と呼ぶ事が多いのですが実際に帯を締めた時に柄がそのままですとお腹に出てくる部分が必然的に横に倒れてしまいます。
それを防ぐために腹の所から柄を90°傾けて織り、帯を締めたときにちゃんと腹の上下が一致するようにしているのです。
では何故他の帯屋さんが中々それをしないのか不思議に思われるかもしれません。
帯を織る際、紋図(帯の設計図のようなもの)が必ず必要になるのですが、この帯のように柄を傾けるだけで新たに紋図をつくらなくてはいけなくなるのです。紋図を作成するのには大変コストがかかりますし、腹の上下にそこまでこだわらずに送り柄は送り柄とそのまま織り上げる事がほとんどのようです。
1本の帯なのに2本分の手間をかけて織り上げる、これもまたおび弘の帯の魅力の1つです。
ご精読ありがとうございました。